The main story<仮想地球とラグナロク>

white

 

空港

 

white

□ The near future <仮想地球とラグナロク>

001

Mark Frost(マーク)は旅行が好きな大学生。
Vacationの時期になるとよくいろいろな国へと旅に行きますが、今回の訪問先である中東でひとつの大きな悲しみと出会うことになります。

空港をでると遙か薄暮の空。
地図を片手に町を目指しているとストリートチルドレンらしき小さな女の子と出会いました。
いつもならやり過ごすのですが、なぜか今日は普段と違う感情がわきあがりました。
みやげ物らしき編んだ紐を受け取り、自分の手首に巻き、そしてゆっくりと話しかけると、 たどたどしいけど少し英語が話せます。母親から教えてもらったそうです。

彼女は最後に「将来は空港で働きたいの だってあそこから世界へいけるから」

バックパッカーの中では名の知れた宿で、最近この近辺が少しきな臭いとの噂話がロビーにてもちあがっていました。

この界隈の危険度はそれぞれのバックパッカーたちの守護妖精の意見が食い違っているため、 要領を得ず、「危険といえば危険」ということになり、いずれにしても明日あたり移動したほうがいいという話でみんな眠りにつきました。

— ここでみんなが眠っているうちに背景をご紹介します。

この時代のバックパッカー旅行はほとんどの人が守護妖精と一緒に旅をします。

そして、守護妖精のアドバイスなどから行動や、目的地をリアルタイムで決めます。
そして実は守護妖精同士もコミュニケーションがとれます。
これは、この守護妖精システムを作った人たちががんばったおかげですが、これにより、 過去には想像できないほどのコミュニケーションがとれるようになりました。

あまりよく知らない人同士でも、場合によっては初対面の人同士でも、守護妖精同士を間に立たせることで簡単に会話ができ、 コミュニケーションもスムーズに行え、すぐに打ち解けることができます。
それは、守護妖精は、通訳はもちろん、相手の国家や、宗教などにも配慮した会話を行うのことができるからです。
これはとても大切な事です。
自分が尊敬していたり、守るべきしきたりを相手が侮辱したり、 けなしたりすることがほとんどなくなったのです。
そして次の良い点では、 例えば3人のバックパッカーが話をするときでも、まるで6人の人たちと話をするような状態になるので、 かなり盛り上がります。
ただし守護妖精が流行っているといってもそれは先進国の国々の話なので、 世界では守護妖精の盗難や紛失がよく起きます。
そこで旅行者が持っている守護妖精はクラウド系コピータイプの機能限定で、 すぐに作動不能となる廉価タイプがメインです。
また、このように通常携帯にリスクを伴う守護妖精の住むモバイルは、 通称 “Swan” とよばれています。
(拡張機器のイヤホンなどは “Feathers “。コピータイプ、オリジナルタイプなどいろいろなシステムや構成がありますが、詳細はまたの機会に)
また、ローカルな地域では、そのシステムを十分に活用できないこともあり、 そのような地域での街中ではあまり公然とは使いません。
バックパッカーの多用する場所は今回のように宿での使用となりますが、 それぞれの守護妖精の能力、システムはまちまちで、守護妖精同士の意見が違うことも多く、 やはり最後は自分の判断が道を開くことになります。

最後に守護妖精の価格は安いものは数ドルですが、高いものはミリオネアクラスもあります。
何が違うか興味のある方は検索してみてください。

そろそろ夜が明けます —

明け方早々空港方面で大きな爆発音と、地震のようなゆれを感じました。
「No way…ほんとうだったんだ」
Markにとってはじめての出来事だったが、同じ部屋にいた、 長くバックパッカーを経験してきたWilliam Madison(ウィリアム)はすぐにカメラを持って飛び出ました。
Markも恐怖と探究心が入り乱れながら、ひこずられるように彼の後を追いかけます。

外に出ると空港の方角に向かうメインストリートの先で大きな黒煙が上がっていました。

いくつかの小さな爆発音、叫び声、向かう人、逃げる人、 昨日までの穏やかなメインストリートが今は、悪魔の領域となっている。
「自爆テロらしい」
爆発物のにおい、トラックや、自動車、ビルが真っ黒な煙を上げて燃えあがっていました。
散乱する破片、こげてくすぶる塊、砂埃、サイレンの音、叫び声が重なり響く、時折銃声も。
警察や軍隊によって封鎖されようとしていた一角にWilliamの姿を見つけました。

ファインダーの数メートル先には女の子を抱く母親らしき女性が、叫んでいる。
心臓が口から出てきそうなほどに、心がさわぐ
「そんなはずない・・ありえない」
彼女の夢が黒煙となって空へとながれたのです。

white

002

母体

Markは周りには珍しく、宗教や国籍、民族に固執しない、Capacity(キャパシティ)の大きな考え方をもっています。
おおらか、適当ともいえます。
ただ、人々がこの地球で、他の生き物と共に幸せに生きていくにはどうすればいいのかいつも考えていました。

「どんな国に生まれていたら彼女の夢はかなったのだろう」

彼はいくつかのSNSやブログ、ツイッターにかかわっていて、サイトもありました。
そこで今回の事件をきっかけに ”あなたが国を創るなら” という小さなコミュニティをつくってみました。
パソコンの傍らで中東で出会った少女の写真が微笑んでいます。(もちろん彼女のEmma Norbel (エマ)の写真もありますよ)

自分が今まで訪れた地域の人や、習慣、文化を紹介しつつ、多くの実体験から、 「こんな国だったらみんなが幸せに生活できる社会ができると思う」そんな夢を語り始めました。
それは実際いろいろな国をめぐった彼だからこそ、多くの人々の気持ちをつかんでいくこととなります。
そして国内はもとより、いろいろな国から少しずつメンバーがふえていきました。

やがてメンバーの中の、3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)などに秀でたJohn Reeves(ジョン)が、
「せっかく理想の国を考えるなら、この地球自体を仮想空間に作り、そこに具体的に国を創っていくと、もりあがるんじゃないか」
そんな提案をこのコミュニティで紹介するとたちまち話が弾み、意外に多いネット、 コンピューター関係に精通しているメンバーたちが集まり、議論、プログラミングがおこなわれ、 簡易ではあるがコミュニティサイトのベータ版として ”仮想地球(Globe of Virtual Reality)” がつくられました。

white

003

ガード

やがて ”仮想地球(Globe of Virtual Reality)” はバージョンアップを重ねるごとに一般の人たちにも広まり、 Version3.0 がメディアに紹介されてからは一気にMassive Hit(大きなヒット)に。

Version4.0 では、仮想地球内に仮想の国家がいくつもでき、その参加者数はSNSの中でもトップ3に入るほどになります。

Version5.0では経済や金融と直接提携するようになり、現実の国家に影響を与えるほどの一大勢力となって、 やがてベータ版として ”仮想地球(Globe of Virtual Reality)” が構築されてからわずか数年で、世界を席巻するコミュニティとなりました。

“仮想地球(Globe of Virtual Reality)” はバージョンを上げるごとに膨大なエネルギーを必要とするようになったため、  成長過程で世界のトップ10企業に名を連ねる”ASG”というグローバルセキュリティ企業の関連企業や、  公式、非公式で、あらゆる団体、組織などのサポートを得るようになります。

やがてMarkが大学を卒業した次の年には北欧神話からなぞられ命名された人工知能 <AI Freyaフレイヤ> が  最高責任者に抜擢され、民間コミュニティで初めて管理を任された人工知能として世界中のメディアが賛否両論の中就任しました。

その直後、人間の知能だけでは得られなかったであろう頑丈なセキュリティを敷いた防壁を築くことで、  個人情報などの厳格な保護がはじまったことは、Markたちを含めて世界を驚かせました。

Mark
「やっと一段落したなぁ。ちょっと南の島にでも行くことにするよ。しばらく音信不通になるよ」

John
「でももう少し礎を固めるのが遅かったら、この巨木の根までは守りきれなかった。  それに実際<AI Freyaフレイヤ>のフォローが無ければ難しかったはずだ。」

William
「過去の多くの企業や、国が犯した過ちを繰り返すほど俺たちはおろかじゃない。まあ、そのかわり、多くの時間と費用、酒代が代償となったがな」

Mark
「まぁいいさ、これが俺たちのプライドだから。そうだろ」

Markたちの達成感を見届けるように、その数ヵ月後の6月の終わり、  突然、 ”仮想地球(Globe of Virtual Reality)” の緊急最高理事会議を  Independence Day(独立記念日)に行うことが幹部会議の中で採決されました

white

004

塔

7月4日

会議が始まり、緊急であるということでメンバーの中では  “仮想地球(Globe of Virtual Reality)”  にとって重大な方向性の決定や、 斬新なVersion Upなどがささやかれましたが、これを予想したものはいませんでした。

会議は議題に関する説明が長時間及んだことで、理事の中で状況を把握していない者からクレームなどがおこりましたが、 最後の総論で、一瞬で場内が凍りつくことに。

「つまり、創造主の皆様にこれまでの労を感謝し、しばらくお休みになっていただくべく、断腸の思いで退任を進言します。」

やがて議案は民主主義の下公正に可決しました。これを ”GVR Revolution(GVR革命)” といいます。

Markは最高責任者を退任し、William、Johnも全権を委譲。
3人は ”仮想地球(Globe of Virtual Reality)” のただのメンバー一個人になりました。

表向きは創造主たちの休暇、また役員の刷新における新たなステップアップということで 大団円会議と後日発表となっていますが、実際は緊急動議によるあっという間の解任決議で、 裏では3人の強権を嫌った有能な役員たちの理事たちへの工作が見え隠れしています。
もちろんこのクーデターのような決議の内容を知るのはこの会議出席者だけで、  “仮想地球(Globe of Virtual Reality)” のイメージダウンを想定し当然罰則を設けた緘口令が引かれましたが、 世界中の諜報機関には時間を空けず収集されました。
まったく困ったものです。

white

005

ワインの少女

「さて、また旅に出るか」Markはみんなの顔を見ながら言いました。

するとJohnがかばんからリングやイヤホンなどウエアラブル端末と、モバイル端末を取り出し渡してくれました。
「この前二人が預けてくれた守護妖精さんは、 その新しいモバイルにお引越ししてもらっている。
ただしお引越しの時いろいろ能力を上げられたので、再会時にはその成長に驚くことになるよ」

Mark
「おおーありがとう」

William
「ひさしぶりに Luca(ルカ){Williamの守護妖精}にあえるな」

John
「正直、今の世界は少し揺らぎはじめている。
人を守り、幸せに導くはずの”守護妖精システム”が広まり、この数年で確かに犯罪や争いは減少していった。
それは先進国には如実にあわられているけど、途上国との格差の隔たりや、邪念を持ったAIの誕生、 スキルの無いものが簡単に入手できる手に余るアイテムの存在。
そしてもっとも危惧すべきは、妖精依存。麻薬や、悪質ドラックのように 常に妖精と一緒にいないと家から出られない人々が増えてきているのは、グローバルスタンダードの弊害というべきだし、 他にも少しずつ、新たな問題が発生してきている。

これらは守護妖精を推奨してきた俺たちも、責任を持つべきことのような気がする。
そこで、まあ、お前たちもそうだろ。俺たちはじっとしていられるわけがない。
そこで俺たちみたいな遊子(トラベラー)にとってこれらは最高のお守りとなるはずだ。
それに、一介の凡人になったとはいえ各諜報機関は一応俺たちをチェックしたいだろうが、 この中にストーカー好きがいるとは思えないし、そこら辺の役立つ機能も忍ばせてある。」

William
「へぇー、まあ外見は普通の守護妖精のモバイルだが、お前のことだ、Fairyの羽よりはるかに大きな翼がかくされているのだろうな。
ただしどんなにITやネットが進化しようとも、全ては所詮デジタルだ。
足を動かして、人々と直接触れ合わなければ、本当のことや、深層まではわからない。
そしてそれが本来の生き物の真理のはずだ。
俺たちはそれをしっている。そういうわけで、ある意味この世界では俺たちは気の合う異端児だから、こうして一緒にいる。
なんだかんだと言いながらな。ハハハ・・・。
ただし、みんな、無理はするなよ。
おれにとってお前たちは何者にも変えられない最高の・・・・そう、飲み仲間だ。墓地でパーティをしたいとは思わない。」

Mark
「お互いにな。そして、ありがとうJohn、これでみんな自由に空を渡れる」

3人はこぶしを合わせ笑い、そしてそれぞれのドアから旅立っていった。 Good Lock

・・・そしてJohnからのプレゼントはこの後大いに威力を発揮し、3人の命を何度と無く守ってくれることになります。
守護妖精にはいろいろなクラスがありますが、今回3人が手にした守護妖精は価格すらない最高位クラスのものだったのですから。

— みんなが部屋から出て行ったので、ここで守護妖精の詳細を少しお話しましょう。

・ 2019年6月1日の守護妖精製品発売メディア用キャッチコピー

「全世界が待ちに待った”守護妖精「光の妖精 Light Fairy」SmartPhone(モバイル機器)タイプ”がついに発売開始!
あなたのライフスタイルをあらゆる角度からサポートする妖精に、あなたは釘付けになる!
この守護妖精には様々なタイプが各企業から発売され、 あなたのニーズに合わせてアウトドアタイプ、ビジネスタイプ、メンタルサポートタイプなど特殊機能が付随しているものなどもチョイスOK!
もちろんそのほかにも、ダンス、ミュージック、スポーツなどの新たなコミュニケーションツールも豊富にラインナップ!
おおーと!
ここであれもこれも楽しみたいと言ったあなた!もちろんノープロブレム!
この”守護妖精「光の妖精 Light Fairy」SmartPhone(モバイル機器)タイプ”は そんなあなたたちの願いをかなえ、ユーザーの時々のニーズに応じた守護妖精をチョイスできるサンダーバード方式なのさー。

さあいますぐ、小さな羽をもった愛くるしいパートナーを探しにモバイルショップへゴー!

詳細は各社の”守護妖精「光の妖精 Light Fairy」SmartPhone(モバイル機器)タイプ”のラインナップを、 カテゴリ別で検索できる総合サイトにてご覧ください。
きっとあなたが望む守護妖精に出会えるはずです。   」

守護妖精は、このシステムのグローバルスタンダードに成功した”ASG”というグローバルセキュリティ企業の関連企業が開発した、 “TFS(Tutelary Fairy System)”を搭載したモバイル向けシステムで稼働します。

この規格を順守した製品が各企業から「光の妖精 Light Fairy」という名前で発売が開始されました。
キャッチコピーはOwner(オーナー)の生活のサポートですが 、実際はもっと深いOwnerとの関係を築き、Ownerを守る、つまりOwnerの命を守る守護神として稼動することが本当の目的です。

このころ世界的にあらゆるリスクについての数値化が流行となり 自分の命は自分で守る系のシステムの開発が盛んになっていました。
また、これらにより社会情勢の可視化が負荷の面を表面化してしまうことにつながり始めたため、 人心が不安定になり始め、政情不安を抱える国が増えつつあったことも、このシステムのヒットに拍車をかけることになったのです。
“ASG”は約3年前に”MSSS(Medical Support Security System)”というメディカルサポートを基軸にした、 ” SmartPhone(モバイル機器)タイプシステムを発表発売し、一気にこの部門での世界シェアを独走することになりました。
同種のシステムは10年以上前からは商品開発が進んでいましたが、 全てのものはクラウドや、ネットワークの依存が不可避であったため、セキュリティでの問題がどうしても解決できないでいました。
どんなに優秀なセキュリティをかけても、すぐに新手のパッキング攻撃でダメージを受け、 また、人間がデータを扱う以上人間からデータが漏えいする事例も後を絶ちません。

そこで”ASG”は独自にスタンドアローンタイプ(単独で自立できる)の開発を進め、 完成した”MSSS(Medical Support Security System)”はその結晶となりました。
業界においてはこのシステムの概要から、半スタンドアローンの分類とみなされていますが、 非公開情報ではベータ版の内部構造が特異な形態となっていることが漏洩したため、 それを知る一部の識者からはユニークスタンドアローンと小声で揶揄されたりもしたようです。

そしてこの流れを汲みつつ、スタンドアローンに小さな人工知能を搭載したシステムが “「光の妖精 Light Fairy」” SmartPhone(モバイル機器)タイプでなのです。

本文にもあったように守護妖精はユーザーの生活の全てをサポートすることを主要な目的とします。
管理できる範囲のサポートもユーザーの望みに沿って会話をしなくても行うことができ、 気分に応じた好みの音楽が自然に耳に入ったり、なにか飲みたい!と感じたときには目の前に飲みたかったドリンクを提示し、 最短でゲットできる方法を教えてくれたりは基本です。

ユーザーの好みや、行動パターンは当然把握していますし、精神状態での変化も顔の表情や、しぐさなどから読み取ります。
例えば、苦手な人とたまたま街中で出会ったりしても、適当なタイミングで電話やメールを鳴らし、 開放するチャンスを作るなどは何の造作もなくできます。
体調管理では、例えば頭が痛くなる前に予防処置はもちろん行いますが、 かかってしまった場合は自己回復能力で直すべきか病院にいくべきか判断し、 必要ならば可能な時間をチョイスして最善の病院に診察の予約を入れることもスムーズに行います。

このような特殊処理能力には”ASG”が得意とするAI技術があってはじめて実現するため、 この時点では”TFS(Tutelary Fairy System)”のコアは他の企業群の追随を許さない、 独走状態であったこともグローバルスタンダード化の成功の理由です。
つまり”「光の妖精 Light Fairy」” SmartPhone(モバイル機器)タイプ には 小さな人工知能と呼ばれる、”little AI”が組み込まれているのです。

おおっと、それでは頭が痛くなりかけたようなのでここで —

3人の希望に満ちた旅立ちから数か月後、Johnの予想に添うように、”地球の悲鳴”が始まります。
これがこれから始まる人類にとっての最初の試練となります。

“地球の悲鳴”とは自然災害や異常気象など、 地球の内外的要因によってまるで地球が悲鳴を上げるように世界中の環境が変調をきたし、全生物にダメージを与えている事象です。
あらゆる原因がありますが今は伏せておきましょう。
それは現在意気揚々と進められているプロジェクトにも関係しますから。
ただし、これだけは言えます。

「自然に学ぶことはすべての基本です。この星すべてのものは自然と共に生きてきたのですから」

そして補足として一つ、この”地球の悲鳴”は後に北欧神話にでてくる、”フィンブルの冬・雪の冬”にたとえられることになっていきます。

white

006

delete

やがて”仮想地球(Globe of Virtual Reality)” は”GVR Revolution(GVR革命)”後ますます膨張していきました。

Markたちが引退し、自由度が高まったことや、<AI Freyaフレイヤ>への信頼から 多くの有能なメンバーがプロジェクトなどをどんどん提言し実行されていったこともありますが、 “地球の悲鳴”による世界的人心の不安から、希望をこの ”仮想地球(Globe of Virtual Reality)” に求める人々が増え、 それにこたえたいと思うスキルを持った有能なメンバーも多くいることが相乗効果をもたらし、 人気が人気を呼びどんどんメンバーが増えていったのです。

しかし翌年、追い打ちをかけるように更なる悲劇”人類の悲鳴”が起こりました。
後に”フィンブルの冬。剣の冬”と呼ばれます。

これは一部の過激な組織、団体や人心の不安、また情報インフラの浸透による格差への不満が地下ネットワークに拡大し、 グループ化されていった組織によって国家間の対立や地域紛争などが頻発しはじめた状態をいいます。

この争乱により特に発展途上国の多くの非戦闘員の人命が失われていきましたが、 この時点においては治安が確立されている先進国などには未だ”対岸の火事”の風潮が根強く存在し、 火の粉を払いはしますが、積極的に火事を消すことには及び腰だったのです。
もちろんそうせざる負えない事情がこの時代にはあったにしても世界がつながっていることは忘れないでほしかった。

第2の試練”人類の悲鳴”がおき始めると、”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”の大きなテーマである 「こんな国だったらみんなが幸せに生活できる社会ができると思う」のコピーでの交流が改めて活発化していきました。

さらに数か月後、NGO(非政府組織)などの調査での、驚愕の失われた人命数が集計、公表されてから ますます世界規模で抗議運動がおこり、それが議論の中心となり、 コミュニティ内のいくつかの正論を呈している仮想国家が大規模化していきました。

そんな中、有効な対策をこうじられないしがらみに満ちた現実の国家や国際連合に痺れをきらした人たちによって、 “仮想地球(Globe of Virtual Reality)” 上のこのバーチャルな空間に、仮想の国際連合が創設されました。
そして、スキルのある仮想の国家が現状に対する不満の受け皿の役目も担うようになります。

ただ、注意しなければならないのは往々にしてこうした集合体は暴徒化する可能性をもちますが、 最高責任者の<AI Freyaフレイヤ>は秩序を守り、たとえ正義を振りかざしても、現行各種法規に反する場合は正当に対応していきました。

これが、Markたちが積極的に<AI Freyaフレイヤ> を頂に要した理由でもあります。

それでもやがて ”仮想地球(Globe of Virtual Reality)” の仮想の国際連合は規模をまし、 現実の国家や国際連合の利権などにどんどん絡みはじめます。
仮想の国際連合の国創りの理想が、現実の国家の悪しき部分の是正を提言を行ったり、 あらゆる紛争の解決を求めはじめ、しがらみだらけの現実の各国家を追い詰めはじめることになったのです。

今や
現実の各国家にとって ”仮想地球(Globe of Virtual Reality)” はネット上の諸刃の剣の存在となりました。

「”(パリの)コーヒーハウス”の二の舞になるわけにはいかない」

そして世界中の現実の各国家の各国既得権利者にとって大きな脅威であると全会一致で可決されたとき、事態は急変することになります。

white

007

ラグナロク

突然ネット上にウイルスの域をはるかに超えた人工知能レベルのプログラム”Ragnarok・ラグナロク(人工知能型ウイルス)”  が現れました。

これを”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”といいます。
(後日IT業界内では別名”電子の悲鳴”と呼ばれます)

ネット上のパブリックサーバーや、クラウドが次々クラッシュ。
金融市場関連のネットワークに侵入後個人情報が消え始めたことで表面化し、 瞬く間に個人資産の消失や権利消滅など大規模なネットパニックが始まりました。
当然インターネットは大混乱。
携帯等の通信障害も起こり始め、制御システムの脆弱な紛争地域などの、制御不能による大型兵器の誤作動なども真実味が高まり、 ネットに依存している現実の国家は、金融大恐慌、世界大恐慌、世界大戦の再来を恐れ始めました。

そこで最悪のシナリオを避けるため、国防関連のイントラネットやサーバーなどは末端まで即座にネットから遮断。
世界中の主要なイントラネットやサーバーなども同様に遮断することで対応しましたが、 それは機能が停止している状態と同じことで、世界中の主要なインターネットや市場がほとんど機能しなくなっていったのです。
少数意見でネットに頼りすぎである世界の状態を危惧し、警告してきた人々も微笑みませんでした。
それほどに深刻に世界と人類が混乱しはじめたのですから。

white

008

崩壊

世界中に広がった”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”に対し、 現実の各国家は、早急にこの時代のネット系集合体トップの ”Neo Border Company” に各国の電子頭脳ブレーンを招集し、 “Ragnarok・ラグナロク(人工知能型ウイルス)”への地球規模の緊急対策本部を立ち上げると同時に反撃を開始しました。

これはこれまでも、これからも無いであろう異例の速さで世界各国の協力体制ができたことになります。

しかし当然”Ragnarok・ラグナロク(人工知能型ウイルス)”は瞬時に世界中のフリーなネット、サーバー、クラウドを駆逐していきました。
これも異例の速さです。
ただしセキュリティの堅固な領域への進行には時間を要しました。

緊急対策本部によってこの鈍化した進行から進行パターンなどの解析が行われ、 後の約一週間で対Ragnarokワクチンやファイヤーウォールを作製、速攻投入などにより、徐々に進行の速度が鈍ります。
また2,3週間後には総力を上げて完成させた “Savior・セィヴィアー(人工知能型セキュリティ)”を分刻みでバージョンアップしながら投入したため、 沈静化がすすみ、わずか一ヵ月後には”Ragnarok・ラグナロク(人工知能型ウイルス)”はネット上から消えました。

当初予想されたまったく先の見えない解決時期が、驚くべきスピードで訪れました。
もちろん消失した膨大なデータや、ソフト、ハードのダメージは散々であったし、 航空機の墜落やインフラの混乱などわずか一ヶ月の間に世界中で発生した多大な被害は やはりネット依存社会の脆弱さを裏付けた。というにはあまりにひどい結果となりました。

そしてウイルスを消滅させたら、今度は早急に復旧しないといけません。
もちろん誰もが数年はかかるし、消えてしまったデータの多くは元には戻らないと思っていました。
まったく先の見えない復旧時期でしたが、 ネット系集合体トップの ”Neo Border Company” のシステムによってわずか数ヶ月でその多くが回復してきます。
まさにミラクル。

また、やがて事態が収束に向かうにつれて被害が明確になっていきましたが、 いくつもの深刻なダメージの中で、紛争地域、軍事施設での、 核兵器、生物化学兵器等の作動が偶然の幸運によって停止していたことは、やはり神の奇跡があったのかもしれません。

そして、事態がひとまず沈静化すると当然次は原因究明です。

早急に原因を調べ迅速な対策が急務である。
今,再度起きれば今度こそネットワーク社会の崩壊となります。
“Ragnarok・ラグナロク(人工知能型ウイルス)”への緊急対策本部は、 データ、ネットワーク復旧作業にめどが付いたころ、原因究明本部となり調査を開始しました。
そして1ヶ月あまりという異例の速さで原因を断定し、結果を各現実の国家と国際連合へ報告、承認されます。
それをもとに数日後、国連総会は世界に向けて発表。

今回の一連に関する原因が ”仮想地球(Globe of Virtual Reality)” にあると。

white

009

三銃士

国際連合の今回の発表に対し、 “仮想地球(Globe of Virtual Reality)”を事実上統治していた仮想の国際連合は、 一斉に反論をおこなったが、原因究明本部から発表されるシナリオに沿ったような立派な証拠の数々によってもろくも打破されていきました。

やがてこれもまたシナリオに沿ったごとく 、発表当日から ”仮想地球(Globe of Virtual Reality)” は悪しき根源であると世界中のマスメディアが大々的に報道し、 あらゆるメディアもこれに歩調を合わせはじめました。
世界中の関心が、「”Ragnarok・ラグナロク(人工知能型ウイルス)”の生誕地は “仮想地球(Globe of Virtual Reality)”」のコピーに集中し、ほどなく多くの世論もそう信じるようになっていくことになります。

そして国際連合は、国際ネットシステム妨害規則違反など、 数々の国際条約違反を理由に、今回の責任と賠償を突きつけ、 同時に ”仮想地球(Globe of Virtual Reality)” の閉鎖を要求しました。

やがて”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”の被害に比例し、 世論の ”仮想地球(Globe of Virtual Reality)” 排斥運動は広がりを見せ、 メンバーは徐々に退会。そしてメディアは彼らを”生還者”と呼び、それを称える不思議な状況がおこります。

巨大な向かい風は破竹の勢いで拡大した  “仮想地球(Globe of Virtual Reality)” を輝かせてきた街のLEDを次々に灯油ランプに代えていきました。
たとえそれでも心硬き多くのメンバーは、今にも消えてしまいそうなおぼろげに揺らぐ灯油ランプの明かりの中で、 濡れ衣を晴らすべく、あらゆるフィールドの情報を集め反論、矛盾点、抗議を粛々と発信していきます。
そして願います。

遥か昔から言い伝えられてきた伝説のように彼らの再来を
Mark Frost(マーク)
William Madison(ウィリアム)
John Reeves(ジョン)
現在は所在が明らかになっていない、 ”仮想地球(Globe of Virtual Reality)” 建国の3人の救世主たちを

white

010

計画

ここで世界に目を向けてみましょう

現在、現実の各国家は獲物をさだめた狼のごとくアグレッシブとなっています。
“仮想地球(Globe of Virtual Reality)” の閉鎖を要求すると同時に、 これらSNSの主要各国の高レベル情報アクセス権剥奪を国際連合に発議。
また今回のようなネットシステムのダウンを二度と起こさないシステムの構築の必要性を全世界に説き、 “仮想地球(Globe of Virtual Reality)”のような無秩序なネットエリアなどの乱立によって、 人民と各国家の安全が著しく脅かされることが無いように、ネットセキュリティの世界レベルの構築をさけびました。

同時にインターネットなどへの規制を行う世界機関として “国際ネットワーク条約会議”が組織されることになり、 もちろん早い段階での参加が有利となるため主要国が次々と参加しすぐに一大有力会議となりました。
これは最終的には批准国間でのネットワークの自由は約束され、 非批准国はセキュリティの壁に阻まれたネットワーク構成となると推測されたので、各国家は入らざる負えない状況になります。

さらに世論の追い風にのって  “Neo Border Company” は具体的なグローバルセキュリティの規格をたたき台として公開しました。

PCはもとより、携帯、電話などすべての通信アイテムにヘッダにアクセス権利ナンバーや、サーバー認証ナンバーを。
フッタにアクセス機器や場所、個人のIDを、挿入しなければ、アクセスできないシステムもそのひとつ。
ただしこれがプライバシーの侵害になることが無いようにネット上のゲート (後に”国境システム「Neo Border Gateway」”とよばれる)をパスすれば 一瞬のうちに各個人情報やログは消去されるシステムであることを抱き合わせて、一部地域にて試験導入もはじめました。
最終的に世界中の主要ポイントにゲートを設け、 ネットは必ずこれらを通過しなければならないシステムとなります。(これはスタンドアローン対策です)

また、先行して無秩序な投稿型サイトなどの監視システム、 ウイルス隔離逆探知機能など様々なセキュリティシステムを付加し構築し始めたことで、 個人の各種権利に抵触すると反発する勢力も出始めましたが、これらへの締め付けが世論を背景に徐々に行われ始めます。
それにより世界中のこのシステムに抵触する組織や団体は戦々恐々となっていくことになりますが、 世論の流れがあまりにも強く、意見、異論はかき消されたのです。