The main story<ワインとシャイニングキャンディー>

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□ The near future <ワインとシャイニングキャンディー>

011

時を少し戻し”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”の1年前。

Markは今や名誉だけもらったメンバーの一人でしかありません。

というわけなので ”GVR Revolution(GVR革命)” 以来足の向くまま気の向くまま自由な放浪を1年以上も続けていました。
Johnからもらった各アイテムと、何より最強の守護妖精Noah(ノア)によって 、何度も危険を回避し、命をすくわれ、ストーカー、危険人物にも出来るだけ会わないでやってこれたことで、 Markは多くの情報や仲間を増やしつつたくさんの収穫を得ました。

最近はヨーロッパを放浪中で、今はここスイスに居ます。
季節はワインシーズンです。

“地球の悲鳴”による異常気象があちらこちらで起こっていましたが、人々は積み重ねてきた歴史を今年も守っています。
あちこちのワインフェスティバルを訪ねては大好きなワインを飲み、人々と語り合っていましたが、 フェスティバルも終盤に入った9月の終わりに不思議な少女と出会うことになりました。

その夜いつものようにこの地方の知人や、街の人、旅行者たち、 この地域に住んでいる各フィールドの識者とお祭り騒ぎの中、横に座ってきた隣街に住むという成年が、 もっと旅の話が聞きたいから自宅に泊まるよう頼んできました。
回りの人たちもその成年を知っているようで、話しを聞かせてやってくれと言うので、そこまで言うならとお邪魔することにしました。
手首に巻いた細いブレスレットもセイフティを示しています。
(これは守護妖精Noahにつながっていて、人前に守護妖精が出ていない時にコンタクトできるアイテムです)
そうそう決して秘蔵のワインがあるからと聞いたからではありません。(たぶん)

店を出て成年に案内されながら少しふらふらしながら歩いていると ふと成年の姿が見えなくなっていました。
周りを見渡すと、横の暗がりからフェスティバルの衣装をまとった少女がゆっくりと現れました。

そしてまるで大人のような口ぶりで

「今年のワインも格別においしくできましたが、来年もまた格別のワインを飲んでいただけるよう 今からお話しすることを出来るだけ早く実行してください。
集まった夢が流れ出さないように、ひとまず楔を打ちつけて隙間を狼がすり抜けられないほどに小さくしておいたほうがいいでしょう。
夢もみなさんの手が届かない所で迷子になれば、狼の餌食となり、その味をしめた狼は群れを成してやってきます」

前のにぎやかな路地から成年が
「Markさーん。こっちですー」

手を上げて答え振り返ると暗がりには誰もいませんでした。

成年の家では、夜も遅かったが家族がとても暖かく迎え入れてくれました。
リビングで秘蔵のワインを頂きながら旅先でのいろいろな国の話をすると、成年は目を輝かせながら聞いてくれた。
時折
「ならば、Markさんは”地球の悲鳴”という世界的悲劇の中にあって”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”はどうあるべきだと思いますか?」
「それは”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”の総意を持って自ずと導かれるものであって、 仮にも今の私の立場では何も言えないよ。 ただ、心と未来を持った人類にとっての新しい、 そして最後の精神の集合体として世界樹のように凛とあってほしいとは思っているんだ」

そんなちょっと難しい話もはいったけど、成年の真剣なまなざしに、心高ぶるものを感じながら夜が更けていったのです。

次の日の朝、一家総出で見送ってくれました。
昨晩は夜も遅かったため出会えなかった娘さんも中央で微笑んでいた。
・・・・・なんとなく似ている

「また来年お会いしましょう」
「是非に!楽しみにしています」

笑顔で歩き出したMarkに一瞬冷たい風がふきぬけ、ふと、ワインの少女の言葉が脳裏に浮かび上がってきた。
「あぁ、俺たちの夢?そう、夢は・・・」

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012

共振

ワインフェスティバルの後、Mark 、William、Johnは久しぶりにアメリカで会うことになった。
それぞれの得たさまざまな情報や人脈、世界情勢などを話し合ったが、 その中でMarkの出会ったワインの少女の話は意外な方向へと進む。

Markはモバイル端末に残されていたワインの少女の声をみんなに聞いてもらった

Mark
「・・・と、ワインの少女は言って一瞬のうちにいなくなったんだ。」

William
「集まった夢、か」

John
「俺たちの夢というより、”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”のメンバーのみんなが持っている夢と見るほうが正しいだろうな」

Noah(ノア) {Markの守護妖精} 
「彼女はMarkに敵意を持ってはいませんでした。ただ、彼女自身に独特な大きな力を感じました。 12歳前後の少女と思われますが、画像が妨害の為、残せていません。 EEEsystem(上空からの監視や主要ポイントのデータなどの系統網)、 SEEsystem(個人や公衆などからのデータの系統網)をスルーできるということで、 彼女のバックはかなりのスキルを持った組織があると考えられます。 ただ、内容が抽象的で、受け手によって解釈がかなり変わることから、必要なテーマのみ伝え、 後は自分たちで解決するようにと言っているようなので、後はこちらがどう動くかということでなないでしょうか。」

Hao ran(ハオラン) {Johnの守護妖精} 
「 EEEsystem や SEEsystem をスルーできる技術を今の段階で持っているのは、 ネット系集合体トップの ”Neo Border Company”、グローバルセキュリティ企業体”ASG”。 そしてそれぞれのシステムの開発企業グループだが、ここが一番怪しいね。 後はトップシークレットですが何を隠そう私だけ。」

William
「隠してるのか隠してないのか・・」

Luca(ルカ) {Williamの守護妖精}
「もうひとつあるんじゃないかい、Haoran」

Haoran 
「ぉお。あまり言いたくはないが、どこでその情報を入手したんだ? 実はもうひとつ、もしかしたらスルーできる技術を得ている団体がある。JBM。コンピューター系ネット集団。 ここは裏のSNSの最大手というわけだから、いろいろな特殊技術情報を合法非合法問わず持っている。 ここにシステムの開発企業グループの研究員が参加しているとするならば、絶対あってはいけないが、ここが一番怪しいということになる。 ただしそうならば、今回の件は彼らが何かの情報をつかんでいて、我々に教えてくれていると考えるのが、一番筋が通っていることになるね。」

Mark
「じゃあ彼女を通じて、その組織が我々に忠告してきたということになるわけだね。」

William
「つまり集まった夢とは”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”のメンバーたちで、 そのメンバーたちをしっかり守らないと狼が食べに来るということだな」

John
「だけどメンバーは自由に出たり入ったりできるから、迷子になるとかならないとかじゃあないだろう」

Luca
「メンバーそれぞれの個人特定情報や、メンバー構成などの重要情報ではないかな」

Noah
「そうだ、メンバーの情報の中には思想や、夢も記載されている。 それら個人情報が盗まれる場所が一か所でも見つかれば、そこに一気に狼がやってくるってことですね。」

John
「最近特に”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”のメンバーが急増して、 セキュリティが間に合わないと聞いている。ハッキングの手口も巧妙になってきていて、 何も関係ない複数のメンバーがいつの間にかスパイ行為の一端を担っていて、それぞれが少しずつ情報を持ち出し、 後でそれらを組み合してひとつの情報にし、ハッキングする。まるで密輸のようなウイルスもあって、なかなか手を焼いているらしい。」

Mark
「そうかー。そういうことだね。」

William
「”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”を快く思っていない奴らはたくさんいるが、 とくに現実の各国家の一部既得権者からは目の敵だからな。そこらあたりが、足元をすくおうと何かしかけてきてもおかしくない」

John
「”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”本体はなんとかやっているけど、 そのまわりの辺境フィールドに目が届かないのが特に問題になりそうだな」

Mark
「とにかくワインの少女が何者であるかはおいといて、今は素直に忠告に従って、 “仮想地球(Globe of Virtual Reality)”の親しいやつらに防壁を再構築するように伝えておいたほうがいいな。」

Luca
「セキュリティの攻防は自転車操業のように終わりがありません」

Mark
「光と影、果てしなく続く、か」

この出来事により10月初旬”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”のセキュリティの再構築がはじまり、 防壁最高責任者は<AI Haviハーヴィ>が就任しました。
巨大に膨らんでいたこのコミュニティは、その大きさから約1年もの時間を要し、 第2弾の大規模改修が非公式におこなわれることになったのです。
(この影響によりクラウドネットへのわずかな遅延が起き始めたため、 “仮想地球(Globe of Virtual Reality)”にはバグが存在するとささやかれました。)

そして翌年、大規模改修が終了した数ヵ月後の10/14 ”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”が発生します。

ノーマル時の十数個の防壁だけでは数秒で突破されていたでしょうから、 ワインの少女の助言が無ければ、”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”はわずか数十秒で壊滅していたでしょう。

なぜならば”Ragnarok・ラグナロク(人工知能型ウイルス)”が 一番初めに襲ったクラウドネットは”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”だったからです。

理由はわかりませんが”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”の辺境フィールドに 突然”Ragnarok・ラグナロク(人工知能型ウイルス)”が発生したから、一番近いネットが攻撃された。
といえばもっともらしいですが、そこに突然発生する要因がまったく無いことから、 時限式でそこに送り込まれていたと推測されています。
(一年後に製作されたノンフィクション映画 「A Month」 では “仮想地球(Globe of Virtual Reality)”の内部から発生したとされているが、 実際は”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”の防壁のすぐ外の辺境フィールドと呼ばれる関連領域からであった)

ちなみに攻撃を受けた時点での防壁は<AI Haviハーヴィ>が構築した最高レベルの数万個といわれています。
もちろん突然の攻撃で数千個の防壁が一気に破壊されましたが、 接触後、数秒後に独断でゲートウェイを閉鎖することに成功。
この防御データは一気にネットに流され、特に “Valkrieヴァルキリー”系のクラウドなどの対応は瞬時でした。

これにより”Valkrieヴァルキリー”系ネットワークがいち早くセキュリティを上げ始めたため、 当初”Valkrieヴァルキリー”系ネットワークのみ大規模なネット障害が起きました。

これによってネット速報で「Valkrieの乱心」との見出しが飛び回ったのですが、 この冗談は数時間後には一切消えます。冗談が言える状況が全くなくなる事態となったのですから。

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013

Don't touch

Markが”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”の発生を知ったのは バスの中で乗客たちが”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”の話をしているのを聞いたからでした。

昼間移動中や、必要が無いときには出来るだけネットを遮断、守護妖精Noahも最低限の活動しかしていないからです。

あわててモバイルから”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”にログインアクセスしましたが拒否。
サイトトップには女神が今起きている危険をささやき、あらゆる自己防衛策を即時行うよう促していました。

「Defcon 1 なんだ・・・」
[ Defcon ]とは デフコン。緊急防衛体制。5段階あり5は平常。1は緊急非常体制

すぐさまWilliam 、Johnたちに連絡を取ろうとしましたが、メールの送受信もスマホもアクセスしにくいため要領を得ません。
日が落ちるころやっと宿につき、回線を確保し特別なProxy経由でやっと、William、John、仮想国家議長や主要幹部と連絡が取れ、 事態の概要をつかんだときには、真夜中になっていました。

「明日の朝一番でそちらに向かう」

と仮想国家議長に伝えると、少し間をおいてから暗号化されたファイルに 「今は動かないほうがいい。状況が把握できるまで一切のコンタクトは控える。
これはただのウイルスの域を超えている。もしかしたら君たちが最後の頼みの綱になるかもしれない」

この内容から事の重大さがうかがえました。
何か大変なことが始まろうとしている。
彼の放浪はひとまず休止。
William、Johnと共に”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”の状況の確認と 情報収集をそれぞれのフィールドで行うことになりました。

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014

白塔

7月4日

終結期間がまったく見通せないといわれた”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”でしたが、 どういう奇跡が起きたのかわずか一ヶ月後に沈静化。
そして復旧期間にめどがついた後あまり間を空けずに国際連合は世界に向けて、 今回の一連に関する原因が”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”にあると発表した。

「仮想国家議長の読みは当たってたな」

Mark、William、Johnはそれぞれが収集した情報を照らし合わせながら導かれた同じ答えを前に、モニターを凝視していました。
ただ、問題はこの発表がメディアを巻き込んで一斉に行われたことでした。
大きな波は正論を曲論にいとも簡単に変えてしまう。

ましてや国際連合から発表されるシナリオに沿ったような立派な証拠の真偽などまったく関係なく、 原因は”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”だと断定されます。
そして数週間のち、国連総会にて”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”の閉鎖決議が採択。
反論をしたくてもくつがえすだけの情報は集められない。

“Ragnarok・ラグナロク(人工知能型ウイルス)”が “仮想地球(Globe of Virtual Reality)”とする出現経路の痕跡の信憑性においても、発信源の特定証拠品、証言をした数名のクラッカーの所在。
どれも現実国家群の隔離された巨大な壁のなかにあり手が出せません。
八方がふさがっている。
が、Mark たち3人は”GVR Revolution(GVR革命)”で失脚のイメージがついていて、 マークは甘く、行動は比較的自由でした。つまりあらゆる可能性を追い求めることができます。

実はそれが理由だったのです。

“GVR Revolution(GVR革命)”の少し前、世界のコミュニティのあり方への危機感から実際Mark、William、Johnは自由を欲していました。
“仮想地球(Globe of Virtual Reality)” のテーマである 「こんな国だったらみんなが幸せに生活できる社会ができると思う」は、 やはりリアルな現実社会での幸せが目標ですが、今現実社会では目に見えない不幸と不安が漂っていて、それを払拭していたのが守護妖精たち。
とはいえ守護妖精もいろいろなタイプが現れ始めたため、 協調し、人々を守ることができなくなってきました。
事態を打開する手がかりを得るためには、やはり直接世界を駆け巡りながら情報や人脈を集める自由が必要となっていたのです。

それにMark は国創りがメインになってきた”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”には、 それに長けたものが必要だと思っていたし、 William は今にもロケットになって月にまで行きそうに膨張していたし、 Johnもあらかた完成したシステム維持は適役にまかせ、この事態をクリエイトする新たな領域にいきたくていらいらしていました。

そこで最後の仕事と決めて”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”の防壁を難攻不落にし<AI Freyaフレイヤ>を最高責任者に任命しました。
その後は出来るだけ自由に動けるよう現在の仮想国家議長などごく限られた幹部が道を敷いてくれたのです。

ただ、3人には知らされていなかった突然の幕引きだったことは、正直本当に革命だったのではないかと、 今回の件が起こるまでは心のそこでは思っていたりしましたが。

いずれにしてもまさかこんな形で”GVR Revolution(GVR革命)”の幕引きが生きてくるとは誰も想像していませんでした。

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015

古城

3人は糸口を見つけるためにそれぞれ思いのあるフィールドに少し戻ることにしました。

Williamはアメリカ地域に、Johnはアジア地域、Markはヨーロッパに向かいました。

世界中の膨大なデータは徐々に復旧していきましたが、まだまだ完全ではなく世界中がいまだ混乱していました。
Mark はその状況の中で、ネットの深層部の端々からもれてきた、公式発表されていない現実の各国家の特別管理区域や、 急にセキュリティが最高レベルに上げられた構造群の情報を確認することからはじめることにしました。
現実国家群がやろうとしていることを調べることで今回の流れをさかのぼれると思ったからです。

そうしている間にも、次第に現実の各国家は国際ネットワーク条約に沿い、 旧インターネットワークから、人民と国家群の安全のためにと徐々に”国境システム「Neo Border Gateway」” への切り替えをすすめていきました。
それに伴い旧ネットワークを使う守護妖精システムなどは時々通信障害を受け始めます。

「早くしないと、まずいな」
しかしMarkは持ち合わせの情報からヨーロッパのあちらこちらを飛び回っていましたが、 なかなか有益な情報を得ることが出来ないでいました。
比較的行動は自由ですが、基本、公式発表の無い情報を、今の混乱しているネットワークから探し出し、 確認していくことは困難を極めていたのです。

そんな状況の中偶然ある山間部の道路の通行禁止情報を得ました。

よくある情報でしたがこのあたりの遥か上空に浮かぶ”Shining Candy”

( “Neo Border Company”が打ち上げた “国境システム「Neo Border Gateway」”を搭載したインターネットワーク用通信衛星。
「Cloud Energy System」という、エネルギー供給システムも備えている。
地表映像なども収集する総合情報収集機能を持ち、現在までに6個軌道上で稼働している)

に近く、これに関するいくらかの書き込みが怪しさを募らせました。

「ここからそう遠くないな」

大きな街から数時間のどかな田園風景の中を走っていると、道路が封鎖されているため転回を促す標識や、通行止めの看板がありました。

Noah
「あちらこちらに防犯システムがはられています。そろそろまずいですね」

Mark
「えぇーこれじゃあただのドライブになっちゃうじゃん。もうすこし、せめてNoahが情報を集められるところまでは行きたいな」

Noah
「近隣に怪しまれないために警備員はいませんが、尋常でないほどのセキュリティがかけられています。」

そう話しているうちに突然舗装されて間もない滑走路のような大きな道、 そしてその先に巨大なゲートが小さくみえました。左右のフェンスははるかに延びています。

Noah
「本格的にサーチされました。ちょっとまずいですね。引き返しましょう」

Mark
「了解」
遠くゲートあたりに警備員の姿が見えた瞬間転回し、もどることにした。

Noah
「相手が本気ならばあまり良くない状況ですね。車は早急に返してください。
ホテルも少し離れた場所に変えましょう。まあ画像はとられていますが識別できないでしょう。」

Mark
「さすが、Noah」

付近の人は 「最近出来たこの先の企業の発電所に不具合が見つかり、念のために周囲を閉鎖しているらしいよ」
「こんな山の中に警備が厳重で輸送機の着陸が可能な発電所か」
ホテルをうつり、さっそく情報の整理を始めた。

Noah
「ざっと得た情報はこれだけです」
それらからこの発電所が重要施設であることと、まだ完全には稼働していないことがわかった。

Noah
「フェンスも、ゲートも警備員も一見普通の施設レベルですが、フェンス手前数百メートルから人間ならば近寄れませんね。
ゲートも低めですが仕掛けがあるようです。
警備員は動きから特殊軍人と思われます。それにあの顔はオリジナルの顔ではありません。
なにより危険なのは、もう少し進んでいたら、モバイルなどの機器は完全にダウンします。
つまり私もダウンします。 そしてその瞬間、あらゆる防犯システムが作動し、車は横転か自走不能、ドライバーは怪我をしたうえ拘束。
まあ、発電所というより司令官クラスの基地ですね。」

民間の精度が落ちるとはいえ天空からのリアル映像が提供されているサイトから確認したが、 このあたりはただの山間部と、あまり知られていない古城が見られるだけで、現実ある舗装された道路は小さなローカルな道のままだ。

「今一番ほしいのは”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”が “仮想地球(Globe of Virtual Reality)”から発生したという、虚偽の証拠と、 その真相を記したデータだが、それが絶対にこの発電所もどきにあるのならば攻め方もあるけど、 何か別の件での最高秘密施設とするならばリスクが大きすぎる。
怪しいには怪しいがあまり関係ない施設だとしたらアタックは避けないと命がいくつあっても足りない。」

その夜、緊急ミーティングでWilliam、Johnもそれぞれに怪しい地域や構造群の情報を得ていたので、 意見の交換など今後の展開を遅くまで話し合いましたが、もう少し確証を得たうえで動こうということになりました。
解散後、一応特殊パソコンを使いブラックネット経由で 何度かこの地点十数か所のサーバーにアタックをかけてみたが相変わらず遮断してあるのか見つけ出せません。あきらめて電源を落とす一瞬パソコンがもたつきました。
それは一秒にも満たなかったのですが、なにかひっかかります。
Noahと顔を見合わせていると突然モバイルに一件の受信メールが。

「なにかいいのこしたのかな」

このアドレスには特殊な経由やプロトコルをつかっているので送ってくるものはWilliam、Johnのほか、 仮想国家議長など信頼の置ける者しかいません。
だけど送信者は黒鼠というID。聞き覚えが無い。

「道標がほし~の~ならneoフォルダの2025.09.30.docだって☆」

うーん、しかしこの緊迫した状況の中この内容はありえない。ていうか、このスパムがありえない。
Neoフォルダとはモバイルに入っているフォルダだが2025.09.30.docには記憶が無い。ゴミにする?
しかしこの違和感。それはやがて胸騒ぎにかわっていきました。

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016

メインストリート

モバイルを見てみるとNeoフォルダには確かに2025.09.30.docがありました。

「路地裏のワイン娘より
近くお会いできると思いますが今は時間がありません。
あなたたちは今いる場所からすぐに消える必要があります。
そしてみなさんのパソコンは汚れてしまいましたので洗濯と漂白をしないといけません」

はっと気づき、すぐさまUSBのJohnが作成した常駐しないステルスタイプのセキュリティを特殊パソコンに走らせました。
すると一見見えないわずかな領域に通常あるはずの無い防壁と、内部にネットへの送信プログラムらしきルーチンがみえました。

「そういえば、この宿の回線は最新のNeo Border Gateway系だっだな・・・・しかしまさか・」

Markはすぐにモバイルで旧ネットワーク経由でWilliam、Johnにこのことを伝え、わびた。

「ピザ屋がくるより先に消えないと俺たちがピザにされるわけね」
「ああ、激辛なやつにな」

通信終了後、フロントからたわいもない電話があった。

Mark
「Noah!部屋にいることを確認されたようだ」

Noah
「移動しなくてはいけませんね。早急に荷物をまとめて寝る振りをして電気を消しましょう。」 そっと外を見ると怪しげな人影が見える。

Noah
「すいません、気づきませんでした。サーチデータを偽造されていたようですね。本当にごめんなさい。」

Mark
「Noahがだまされるなんて、これはそうとうまずいな、ハハハ」

Noah
「会話の一部を得ました。あなたの名前が出た。相手はあなたをMarkと知っています。」

Mark
「ちょっと近づきすぎたのは反省するべきだが、いずれにしてもここはかなりな重要ポイントだと教えてくれているわけか」

Noah
「お話はあとで、後13分で本体が来るようです。ミッションはあなたの絶対拘束です。」

すぐさま宿を出て夜の繁華街向かって歩いた。
Markの擬似ウェア(赤外線などにサーチされにくい)+変身術のライセンスは神業の域である。Noah
「いつもながらリスペクトします」

しばらく歩くとネオンが見えてきたが、遠く後ろにヘッドライトが見えたので物陰に潜むと、 やがてMarkの前でぼろぼろの車がエンジンをつけたまま止まった。
見ると荷台の隅に黒い鼠の絵が描かれています。

「後から来るベンツに乗るか、この車に乗るかはあんたのじゆうだ」

幾時間走ったろうか、夜が明けたころ小さな町で降ろされました。そして男は何も語らず走り去りました。

Mark
「ここ、どこ?」

Noah
「ごめんなさい、悪い奴らがサーチしていて、 ネットにつなげないので漠然とした場所しかわかりませんが、少なくとも危険な場所ではありません。」

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017

ポンコツ車

通りは朝市が開かれていて人であふれかえっていました。

Mark
「木を隠すならば森の中か・・・」
「ま、とにかくおなかがすいたな」

ひとごみに入り温かいフードをゲット。 ほどほどに観光客もいて、心惹かれるアイテムが並ぶ露店に今の自分を忘れてしまいそうになったとき、 振り向いた瞬間、筋肉質で浅黒い強面の男が立っていました。
Markはびっくりしてひっくり返りそうになりましたが、よく見るとちりちりの頭に三角の耳らしきものが二つのっていて、 足の間からはお尻から垂れているであろう紐が垂れ下がっているのがみえます。

Mark
「まさかとは思うけど、ねずみさんでしょうか?」
恐々独り言のように小さくたずねました。

黒いねずみ
「は?誰がねずみだ!黒いねずみだろうが!」

Mark
「あ、すいません。そうです」

「ここは旧インターネットの領域だ。適当な所で物を洗って来い」

そう言うと人ごみの中に、黒いおおきなねずみは消えていきました。
街でモバイル全てを洗濯、漂白。
William、Johnの安否確認と情報交換を済ませ、朝居た場所でふらふらしていると、 三角の耳をつけたあの黒いおおきなねずみが乗った車が止まりました。

黒いねずみ
「ばかやろう!ふらふらするな!」

Mark
「は、すいません」
なんとも理不尽な話だが・・・

1時間ぐらいは走ったろうか、朝居た小さな街より少し大きな、そして懐かしい街の繁華街でおろされた。
車からはみ出そうな黒いねずみさんの、傾いた重そうな車が走り去った時、

反対方向から突然銃声らしき音が聞こえた。

しかし驚きはしない。

そう、そうだ、あの年と同じ。ワインフェスティバルの始まりである。

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018

夜の路地

Mark、は通りのカフェに座り、パレードを見ながら2年前のワイン娘との出会いを思い出していました
今年のワインフェスティバルも世界の騒乱を打ち消すように盛大で、山車やパレードで街は大盛況です。

「これにあわせたわけではないだろうけど、またここに来れてうれしいな」

黒鼠に注意をしながらフェスティバルを楽しんでいると偶然知人に会ってしまいワインをご馳走になってしまう事に。
「今年のワインも最高ですね!」
そんなこんなで時が過ぎていったが、昨晩から眠っていない上においしいワインは、Markを眠りにつかせないわけがなく、 いつの間にか記憶が飛んでしまいました。
夕刻になってメイン道路あたりからだろうか新たな楽器の音や歌声、人々の歓声、笑い声などで目が覚めました。
知人が「お、Markが復活したぞ」いつの間にか増えていた知人たちの中に2年前に世話になった成年もいます。

「なんと久しぶり!元気だったかい?」

夜も更け始めたころ、また彼の家にお邪魔することになり、店を出てしばらくするとまた成年の姿が見えなくなりました。

「デジャブだな」

そっと路地を見ると、Markは再びびっくりしてひっくり返りそうになりました
(あの少女に出会えると思うでしょう。普通)
あのちりちりの頭に三角の耳らしきものをつけた男が立っています。
(この人に暗がりに立たれるとたいていの子供は泣き出すんじゃないだろうか)

「守護妖精は切っておけ。クラッシュするぞ」

そういえばワインで思考回路が鈍っていたのでNoahはハイレベルで生かし、ブレスレットでつなげていた。

「こっちだ」

「は、はい、いや、でもちょっと・・」

「やつは大丈夫だ」

前から見れば路地をどんどん進んでいくワイン片手の男は最強のボディーガードのようだが、 後ろからついていくMarkにとっては、お尻から垂れている尻尾がだんだんなんともかわいくみえてきました。
やがてバロック調の建物の中へ案内されました。
主のいない宮殿の様ですが、誰かがしっかりの手入れしているであろう整然とした中庭に差し込む月の光は、凛としています。
その横の通路を、男の後をついていくと大広間への大きな扉の前につきました。

「この扉のむこうで使徒様がお待ちだ」

そういうと彼はもとの通路をもどっていきます。

扉を開けるとその奥には窓から差し込む光が中央を照らしています。
そこへゆっくりと進み、中央あたりまで来たときに、前方から体を包みこむような声が聞こえました。

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019

朝日

「おまちしていました」

「私は現実空間と仮想空間とは別空間の階層からきたRoskva(レスクヴァ)といいます」

その無色透明な声を聴いた瞬間、疑心暗鬼な思いや恐怖心はすっかり消えました。
正面に透き通るような女性が浮かび上がります。
そして気がつかないうちに仮面をつけた数名の人が静かにMarkの周りを囲んでいました。

Markはここで、現実の各国家がすすめる”国境システム「Neo Border Gateway」”の現時点での真相を聞かされました。
また”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”を引き起こした “Ragnarok・ラグナロク(人工知能型ウイルス)”の起源と本当の名前、そこに隠された計画。

またあの”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”は実は本当のラグナロクではない事。
そのほかにも極秘に進められている旧インターネット壊滅計画や “仮想地球(Globe of Virtual Reality)”消滅計画、そしてその計画の阻止に必要な現時点出来る限りのアイテムも譲り受けたのです。

結論は、つまりすべてはこの”国境システム「Neo Border Gateway」”を構成している 世界中の各国家の特別管理区域につながっていて、今回Markが目星をつけていた発電所はやがてそのコアになる施設になる。
そしてやがてすべての計画の元凶がその場所に集約される前に、 それを打破していくほかに各計画阻止は不可能である。難題ではあるが、道はあった。

彼女は最後に言います。

「ネットは、多くの歳月をかけて人類がやっと築いた、人と神が触れ合える自由な道なのです。
その道に壁を設け、逸れる事の出来ない道の先に待っているのは、殺伐とした岸壁と漆黒の海。この壁を完成させてはなりません。
できればもう少し早くこれらの情報、アイテムをお渡しできれば自体も大きく変わっていたでしょうが、 残念ながら、私たちにもこれらを本日そろえるために多くの悲しい困難がありました。
つまりこの道はけして楽な道ではありません。
しかし、ネットの先にある神々はあなた方に微笑まれました。
ならば、これらのアイテムと、神のご加護があなたたちを勝利に導き、再び神と自由に触れ合う道を築くことが出来ると信じます」

(後に、彼女の背景には世界的ネット集団JBM(Jet Black Mice)が存在することがわかります)

やがて夜が明けてきました
一人になったMarkは朝日を浴びながらゆっくりと深呼吸。
しかし、その顔に笑顔はありませんでした。
実際彼らはハリケーンのようなアゲンストの中に立っているのですから。

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020

恐怖

— Markが呆然として動かないので、現在、世界にめぐっているメディアを整理してみましょう

@  ”Neo Border Company”は”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”から地球を救った!

@ ”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”が生み出した、悪しき”Ragnarok・ラグナロク(人工知能型ウイルス)”を倒すため 現実の各国家は国を越えて協力し、各国の電子頭脳ブレーンを招集。
“Neo Border Company”の緊急対策本部が中心となり”Savior・セィヴィアー(人工知能型セキュリティ)”をもって戦いに勝利したことは、 人類が初めて全てを乗り越え一致団結できる事を証明し、 歴史上偉大な一ページとなった。それは新たな人類の共存への未来を切り開くものである。

@ ”地球の悲鳴””人類の悲鳴”に続き”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”は 世界に大きな爪あとを残し、多くの尊い命も失われた。
私たちはこのようなことが二度と起こらないことを願い、 現実国家群の提唱するグローバルセキュリティシステム”国境システム「Neo Border Gateway」”を支持しよう!
世界は協力し合うことができ、ひとつになれることが証明された。
これからはこのひとつになった世界が、ウイルスなどの無い安心、安全で、 治安が守られる理想的なネットワークによって再び繁栄を取り戻さなければならない。

@ 数か月後に製作公開された”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”の 映画 「A Month」 はノンフィクション映画であり、空前の大ヒット。
現実国家郡は正義のグループ、仮想国家郡は悪のグループという印象を全人類にしっかり植え付けた。

@ なにかしらのグローバルセキュリティシステムは必要であり、 “国境システム「Neo Border Gateway」”は、理想的、現実的に全て備えている

つまり
世論ほとんどが悪の”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”、正義の”Neo Border Company”と認識されている状況。

さらに、正義の”Neo Border Company”は “国境システム「Neo Border Gateway」”の、 グローバルセキュリティシステムの推進の他に、エネルギー供給システム”Super Energy system”を開発した。
これは新たなダウンサイジングとイノベーションによって、 飛躍的なエネルギー高効率化に成功し、エネルギー資源の枯渇化が刻一刻と迫る人類の、希望のエネルギー供給システムとなろうとしているのです。

まったくこの状況の中でだれが”国境システム「Neo Border Gateway」”への異論を唱えられるだろうか・・・

ゆっくりとMarkが歩き始めました。それではこの辺で —

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「Neo Border Company」は世界中からの賞賛に乗って、映画 「A Month」公開 一ヵ月後に人工衛星「Shining Candy」7号機を打ち上げます。
新たな”国境システム「Neo Border Gateway」”と”Super Energy system”を搭載して。

この「Shining Candy」7号機は、他の人工衛星「Shining Candy」よりも、いろいろな面で、はるかに強力な機能を備えているといいます。
まさに飛ぶ鳥を落とす勢いとなった「Neo Border Company」ですが、本当にこのままでいいのでしょうか。
この勢いの始まりはうそからはじまったのです。
嘘にウソを重ね証拠をねつ造し世論を誘導したとしたら、本当の人類の幸せは嘘から始まったことになります。

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希望の光

繁栄をもたらすという大義の礎に、嘘の軽石を敷き詰めるのはおろかなことです。

そしてなにより、虚偽のもとでの繁栄は、真実を貴ぶ人類には似合わない。10月の映画「A Month」公開から少し後、”国境システム「Neo Border Gateway」” の話題から熱が冷めるに従って 、まず知識人や特殊団体などが敏感に新しいネットに得体の知れない嫌な空気が流れ始めていることに気づき始めました。
ネットワーク上での交流と実際あって話す感触が若干ずれていることが多く、大小さまざまな諍いがあちらこちらでおき始めます。
特に守護妖精の中の “闇の妖精 Dark Fairy”をもつユーザーの常軌を逸する行動が目に付き始め、 やがてネットワーク上の違和感を口にし、大きくしようとした者は必ずいつの間にかいなくなるか、 人目から遠ざかっていきました。そしてやがて一般にもそれが感じられ始めました。

つまり”国境システム「Neo Border Gateway」” の本格的な始動が始まったのです。
これはネットの管理統制ではなく人間の管理統制がおりこまれていたのです。

12月 “JBM(Jet Black Mice)”から受け取ったアイテムなどを前にMark、William、John、仮想国家議長や、 限られた幹部との話し合いは重い空気の中で始まりましたが、 Johnの提案で”ASG”幹部と<AI Heimdalヘイムダル>、 “仮想地球(Globe of Virtual Reality)”の<AI Freyaフレイヤ>も同席したことは状況を好転させました。

“国境システム「Neo Border Gateway」”の現時点での真相の中で、 旧インターネット廃止計画や”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”消滅計画などは受け取ったアイテムにより阻止が可能であるとわかりました。
また新たな情報でメディアには一切載っていないが、各地で大きな紛争が勃発しており、 それが”国境システム「Neo Border Gateway」”のマインドコントロールに関係していること。
異変に気づいている知識人の発言はすべて消去され、彼らは現実国家郡の管理下にあること。
それらからはじきだした答えは、”国境システム「Neo Border Gateway」”は 人間管理の箍がはずれ<AI Hrungnirフルングニル>が掌握、逆に人間を管理しようとしている。ということでした。

会議の後半<AI Heimdalヘイムダル>が”ASG”の主神<AI Odinオーディン>を、 <AI Freyaフレイヤ>が”仮想地球(Globe of Virtual Reality)” の主神<AI Freyフレイ>を召喚したいと申し出ました。
(”ASG”と”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”の方向性が一致をしていると判断し、 それぞれの最高決定権をもつ主神の同席が必要となったために)

それぞれの挨拶がおわり、<AI Odinオーディン>から、驚くべき発言がなされました。
世界がこのような状況になることは遥か昔からわかっていたと。
そしてゆっくりと”巫女の予言”の話を始めました。

この日”ASG”と”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”は同盟を結び <AI Heimdalヘイムダル>と<AI Freyaフレイヤ>は即座にミッションに入りました。
目的は旧ネットワークを守ること。それに沿ってネットワークやクラウドなどに防壁をひそかに築いていきました。

やがて知識人や特殊団体のネットへの異変察知から1ヶ月後 これらから漏れ出した戦慄する情報から、世界中の人々は徐々に監視、管理されはじめていることを知ります。
そして気がつかないうちにかぶせられた天網恢恢により、 見えない壁と壁の間から抜け出せなくなったような恐怖におびえ始めたのです。

つまりネット上の言動、行動や、普段の生活もすべてがガラスの中で生活をしていることに等しい状態になっていったのです。
もちろん個人情報保護は前にもまして厳しくなり、完全に守られています。
たぶん侵入も漏洩も皆無に等しい。
全てを教える代わりにすべてを守ってもらうわけです。

ネットでの広告はあなたが買ったものや、あなたが興味のあるものなどが表示されます。
SNSなどに写真など多くの個人情報がクラウド化し、好きな音楽やテレビも書かれています。
趣味が複数重なった人ほど話は合うかもしれません。
あなたが調べた言葉は記憶され、あなたの興味があることを学びます。
あなたが今いる場所もスマホは知っているし自宅の電化製品もコントロールできます。
やがてあなたの車は自動で走ろうとします。

何もしていないにもかかわらずいつの間にか多くの子供の情報が勝手に収集されていたという状況とは遥かに次元が違います。

多くの布石があった後に、人々はここにいたって、 やっとつなげてはならないシステム”国境システム「Neo Border Gateway」” に自分たちでつなげてしまったのです。

そしてこれが本格的な始動の意味なのです。
しかし私たちはすべての希望を失ったわけではない。

12/24 「自由でないネットはネットではない」

Mark、William、Johnが”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”の仮想国際連合議場に立っていました。

「思い出そう、”こんな国だったらみんなが幸せに生活できる社会” 今、この世界がそれに向かって歩んでいるか?」

“仮想地球(Globe of Virtual Reality)”の防壁は破られておらず、発言は検閲できない。メンバーは久しぶりに歓喜しました。
みんなの想いがひとつになった夜、”JBM(Jet Black Mice)”から新たにひとつの情報が入りました。

「”国境システム「Neo Border Gateway」”は「Shining Candy」8号機打ち上げにより、完成形となるため、 「Shining Candy」8号機打ち上げは絶対阻止しなければならない。」

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スクリューミル

「人類が望むべく本当の人類の未来のために全力をつくしましょう」

「Neo Border Company」AI主神・<AI Skrimir スクリューミル>

1月1日このメッセージが世界を駆け巡った時、全てのネットワーク上でAI領域の宣戦が布告された。
同時に角笛ギャラルホルンが全AI領域に鳴り響く。

これが本当の”ラグナロク・1年戦争”のはじまりです。

AI領域とは、AIが管理する領域のことで、この時代一般的にはクラウド、サーバーなどは多くがAIか、 それに近いシステムの管理下で稼動していますが、この限られた範囲のことです。
しかし今回<AI Skrimir スクリューミル>が意図した範囲は世界中のゲート、ロード、ケーブルから、 通信システム、果てはネットワーク機器、一個人のモバイルなど、AIが制御できる全ての領域が含まれます。
各AIは独自のキャラクターがありますが、個々がまったく異質ではなく、それぞれに系統があり、同種の系統との相性は良いですが、 異種の系統とは不都合が起こりやすい特性があります。
このため、世界のネットワーク全体を単独またはどれかしらのひとつの系統でのAI管理下におくことは現実的に不可能なため、 一般的に大きくても制御できるひとつのAI領域は個々のイントラネットの類までとなります。

ところが<AI Heimdalヘイムダル>と<AI Freyaフレイヤ>は同種の系統での深層部において一般的なAI領域はもとより、 そのAI領域同士をつなぐ様々なネットワークまでも、透明な防壁をひそかに張り巡らせたため、 年の瀬に偶然それを知った<AI Skrimir スクリューミル>はあわてました。
<AI Heimdalヘイムダル>と<AI Freyaフレイヤ>は自分たちが移動できる全ての領域にこれを構築していったのです。

今回「Neo Border Company」にとって”国境システム「Neo Border Gateway」” の推進に関して AI領域の確保は全世界を網羅しなければならないため、時間的な猶予も、領域の占有、 介在においても限定的な介入で対応できないと判断し、広域的な対応を取るためにも宣戦布告がもっとも有効でした。
なによりAIの領域であるため、この宣戦は人類への影響が極めて小さいことが即断の理由です。

宣戦布告後<AI Lokiロキ>
(亜種は”Ragnarok・ラグナロク(人工知能型ウイルス)”として”Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)”時に 広まった)
が世界中のネットワーク上で攻撃を開始。
潜んでいたクラウド、サーバーなどから一斉に活動を開始し始めました。

同時に「Neo Border Company」系AI(Jotuns Side)が旧ネットワークに次々進行しました。
Markは”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”防御の中核に、
Williamは現実世界でのハード面での防御の中核に、
Johnはネットワークの防御の中核にそれぞれ布陣し対抗。

昨年12月から構築が行われていた<AI Heimdalヘイムダル>と<AI Freyaフレイヤ>の透明防壁は 大きな防御力を発揮し、<AI Lokiロキ>の攻撃は時を逸していたことはありますが 末端の低セキュリティのネットやクラウド、端末が次々に被害を受けました。
しかし”<AI Lokiロキ>対策チーム”を早急に構成。
現実世界の防御に”ASG”幹部Thjalfi(シャールヴィ)が。AI領域に<AI Thorソー>が投入されたことにより徐々に排除していきました。

また随所に「Neo Border Company」系AI(Jotum Side)が次々と進行してくるが、 透明防壁、特殊防壁や”ASG”系AI(Asir Side)が持ちこたえます。
これにより旧ネットワークでのAI領域は”仮想地球(Globe of Virtual Reality)”側に有利となっていきました。